「失う」と「無くす」
映画『Lost & Found』のチラシにあるコピーは、
「失くしたもの、そして見つけたもの」
となっている。
でも、本来の日本語としての正解は、
「無くしたもの、そして見つけたもの」
である。
「失」と「無」。
「無くす」という字を見たとき、ものすごい違和感を覚えた。
「無」には、どうしても、「存在しない」という意味が強くまとわりつくからだ。
そして、映画の中で描いていることとは大きく食い違っていた。
映画ではそれぞれの登場人物が何かをなくすが、そのなくした物は、持ち主の手を離れてしまっただけで、必ずどこかにあるのだ。
消えて存在しなくなったわけではない。
だから、「無」という字は避けるべきだと思った。
逆に「失う」という言葉は、とてもしっくりきた。
「見失う」と表現することができるように、今まで見えていたものが、ふいに見えなくなるような、どこかにあるはずなのに、自分の手をいつのまにか離れてしまったような感じも、言葉のイメージとして持っていると思った。
しかし、「失ったもの、そして見つけたもの」とすると、これまたトーンがぐっと下がるような気がする。
「失う」という言葉は、目にするコピーとしては重すぎる。
どうしても「なくす」というサウンドはほしい。でも、「失う」のニュアンスもほしい。
その結果、「失くしたもの、そして見つけたもの」とし、「失」に「な」のルビを打つことにしたのである。
『Lost & Found』の初日がとうとう明けました。
「無くした」ではなく「失くした」にこだわったそのわけを、観てくださった方にもどうかどうか伝わりますように……。
☆☆☆
『Lost & Found』の初日舞台挨拶に、遅い時間にもかかわらず、たくさんの方に足を運んでいただいたこと、本当にうれしく思います。
ありがとうございました。
日替わり上映をしている『ロックアウト』も、とても素敵な作品です。
スリラーなのか、ヒューマンドラマなのか…。
ジャンル分けのできない深みを、ぜひ、その目で確かめてみてください。
今後も、トークショーや英語字幕上映日などありますので、どうぞよろしくお願い致します。
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映画『Lost & Found』
監督:三宅伸行
脚本:荒井真紀/三宅伸行
撮影監督:八重樫肇春
キャスト:菅田俊、坂田雅彦、畑中智行、寉岡萌希、藤井かほり、菜葉菜、ひもの屋カレイ、三田村賢二、菅原瑞貴、永井穂花、ジリ・ヴァンソン、田中優樹
☆シネマート六本木にて公開決定 ※映画『ロックアウト』(監督:郄橋康進)との日替上映になります。
詳しくは下記サイトへ