落とし物あずかり所、初めての訪問

「初めての落とし物」というタイトルでこのブログをスタートさせたが、今日は、初めて駅の落とし物あずかり所を訪問したときの話を。


電車とのつきあいは、高校に通学するときから始まったが、高校時代に駅の落とし物あずかり所へ行ったことはなかった。
駅や電車で、物をなくしたことがないわけではない。
定期券は数回落としたし、学生証もなくしたことがある。それから、傘も。
でも、定期券や学生証は自宅に連絡が来て、落とし物あずかり所ではなく駅の窓口で受け取った。
そして、傘は取りに行かなかった。


大学生になって、電車の網棚に忘れ物をしてしまったとき、初めて取りに行かなければ…と思った。
駅員さんに問い合わせをして、池袋の落とし物あずかり所へ行くように指示される。
身近なようで、そうでもない、落とし物あずかり所。
……こんなとこにあったんだ。いつも前を通っている場所にそれはあり、少し驚いた。


中に入ると、係員の方がふたり。
とてもにこやかに、やさしく対応してくれた。
「あった、あった。よかったねー」と私よりもうれしそうな顔をしてくれたのが、印象的だった。
忘れ物を受け取ると、言われた。
「印鑑、持ってないよね…。ここに拇印押してくれる?」
朱肉を出され、ノートを指差された。


拇印を押すのは、初めての体験だった。
べたっと自分の指紋が押されたノート。
そのときに、何を受け取りに行ったのかは、すっかり忘れてしまったのに、ノートに名前を書き、住所を書き、拇印を押したことは、どうしてか心に残った。


『Lost & Found』で描いた落とし物あずかり所のイメージは、私が初めてお世話になったこの落とし物あずかり所に影響を受けている。
落とし物管理のコンピュータ化が進み、最近行った別の落とし物あずかり所では、もう拇印を押すようにも言われなかったけれど、映画の中ではどうしても、アナログな感じや温かい人間味ある雰囲気を描きたかった。


映画のロケーションとして協力してくれる鉄道会社を探しているとき、この落とし物あずかり所に行って頼んでみた。
場所は移転し、中は昔と趣も変わり整然としていて、そこにいる係員も当然ながら替わっていた。
「ここが初めて利用した落とし物あずかり所なんですよ」と、情に訴える方向で撮影の協力を求めたが、かなりあっさりと断られてしまった。
その代わり、フラワー長井線という、この上ない撮影協力をしてくれた路線に出会うことになった。
そんな話も、またいつか……。



☆☆☆
昨日(2/14)にアップルストア銀座で行われた監督トークショーには、大勢の方に足を運んでいただき、本当にありがとうございました。
2/27(土)〜の映画公開中も、このようなイベントがあるので、ぜひ遊びに来てください。



■■□■□□□■□■□□□■□■□□□■□■□□□■□■□□□■□■□□□■■□■□□■■□■□□■■□■□□

映画『Lost & Found』

監督:三宅伸行

脚本:荒井真紀/三宅伸行

撮影監督:八重樫肇春

キャスト:菅田俊坂田雅彦、畑中智行、寉岡萌希藤井かほり菜葉菜、ひもの屋カレイ、三田村賢二、菅原瑞貴、永井穂花、ジリ・ヴァンソン、田中優

☆六本木シネマートにて公開決定 ※映画『ロックアウト』(監督:郄橋康進)との日替上映になります。

詳しくは下記サイトへ

http://www.gr-movie.jp