『Lost & Found』後遺症・・・


『Lost & Found』というタイトルの映画の脚本を書いてから、駅構内にある「Lost & Found」の文字がやたら目に入るようになってしまった。
ある日のこと、待ち合わせ場所の目の前に落とし物あずかり所があり、とても大きな看板を掲げていたので、思わずカメラを取り出し写真を撮っていたら、ひとりのサラリーマン風の男性がフレームに入ってきた。

男性は鞄以外に何も持っていなかったので、何か落とし物をとりに来たのだろうか。
応対した係員が奥に引っ込んでしまってから、しばらく間があった。
彼はなくしたものを取り戻せるのか…と、待ち合わせ時間よりだいぶ早く着いて暇な私は、ちょっとドラマチックに彼を見守った。
すると、係員は何かを手に男性の方へ戻ってきた。
・・・水筒だった。しかも、かなり大きい。
世には、水筒男子なる言葉があるが、彼も、会社にその大きな水筒を持っていっているのだろうか。
男性は、受け取った水筒を肩にかけ、軽やかに去っていった。


その姿を見て、自分も同じような経験をしたな…と思い出した。
私の場合は、お弁当だった。
帰りに忘れるならまだしも、朝、まだお弁当の中身がぎゅうぎゅうにつまっている状態のものを、どこかへ置いてきてしまったのである。
しかも、私は、お昼になるまでその事実に気がつかなかった。
いざ、食べようとすると、……ない。
一瞬「あっ、今日は持ってこなかったんだっけ」とも勘違いしそうになるが、いや、やっぱり今朝ちゃんと作ったはず…と思い返す。
「あーあ、またやっちゃった」と思ったのは、私は作ったお弁当をそのまま家に忘れたのだと思ったからだ。
そういう失敗は今までに何度もしていた。

仕事が終わり、家に帰ってみると、お弁当はなかった。
……あれ?


結局、電車の網棚に忘れていたお弁当は、落とし物あずかり所へいっているという情報を得た。
けれども、その後数日間、仕事が忙しくて普通の時間に帰宅できなかった私は、落とし物あずかり所の開いている時間にどうしても間に合わず、生ものであるところのお弁当の中身はこのままどうなるのだろうと心配しながら、しまいには、取りに行きたくないなぁ…なんて思ってしまった。
だって、絶対にカビが生えていたり、腐ったりしている…。
でも、もしかしたら、落とし物あずかり所のひとが、気を利かせて中身を処分してくれてるかもしれない。
だって、見るからにお弁当だし、中身がつまっていますって感じに重いし!


けれども、一週間後、にこやかな係員のおじさんから受け取ったお弁当は、やっぱり重かったのでした…。


☆☆☆

【お知らせ】
本日(2/3)発売の「シナリオ」という雑誌に、『Lost & Found』の脚本が掲載されています。
本屋さんで見かけたら、ぜひ覗いてみてください。


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映画『Lost & Found』

監督:三宅伸行

脚本:荒井真紀/三宅伸行

撮影監督:八重樫肇春

キャスト:菅田俊坂田雅彦、畑中智行、寉岡萌希藤井かほり菜葉菜、ひもの屋カレイ、三田村賢二、菅原瑞貴、永井穂花、ジリ・ヴァンソン、田中優

☆六本木シネマートにて公開決定 ※映画『ロックアウト』(監督:郄橋康進)との日替上映になります。

詳しくは下記サイトへ
http://www.gr-movie.jp